
「農業は労働時間や休日の規制が一部適用されないから、有給休暇も必要ないのでは?」――農業の雇用管理では、こうした誤解が生じがちです。
農業でも年次有給休暇(年休)は必要です。労働基準法第41条による農業の適用除外は、主に労働時間・休憩・休日の規定に関するもので、年次有給休暇を定める第39条は適用除外ではありません。正社員だけでなく、要件を満たすパート・アルバイトにも年休が発生します。
農繁期と農閑期で仕事量が大きく変わる農業だからこそ、付与日と取得状況をあらかじめ管理することが重要です。
農業でも有給休暇が必要な理由
労働基準法第41条第1号は、一定の農業などに従事する労働者について、労働時間・休憩・休日に関する規定を適用しないとしています。一方、有給休暇は「休日」とは別の制度です。もともと働く予定の日に、賃金の支払いを受けながら休めるのが年次有給休暇です。
したがって、個人経営か農業法人かを問わず、労働者を雇っている場合には年休の付与要件を確認しなければなりません。農業の36協定については、以前の記事「農業では36協定はいらない?|労働基準法41条の適用除外を分かりやすく解説」もご覧ください。
ただし、同居の親族だけを使用する事業には、労働基準法が適用されません(第116条第2項)。他人を1人でも雇用すれば事業には労働基準法が適用され、雇用した労働者の年休も確認が必要です。同居親族についても、他の労働者と同様の就労実態があれば、労働者に該当する場合があります。
いつから何日付与する?基本は「6か月・出勤率8割」
年休は、原則として①雇入れから6か月継続勤務し、②その期間の全労働日の8割以上出勤した労働者に発生します。週5日勤務または週30時間以上勤務する労働者の場合、最初の付与日数は10日です。
通常の付与日数
| 継続勤務期間 | 6か月 | 1年6か月 | 2年6か月 | 3年6か月 | 4年6か月 | 5年6か月 | 6年6か月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
その後も、所定の出勤率を満たせば勤続年数に応じて付与日数が増えます。なお、年休は事業主が「認めたときだけ」発生するものではなく、法律上の要件を満たせば発生します。
週1~4日のパートにも有給休暇はある
週の所定労働時間が30時間未満で、週の所定労働日数が4日以下の労働者には、勤務日数に応じた比例付与が適用されます。例えば、6か月継続勤務し、出勤率の要件を満たした場合は次のとおりです。
| 週の所定労働日数 | 6か月時点の年休日数 |
|---|---|
| 週4日 | 7日 |
| 週3日 | 5日 |
| 週2日 | 3日 |
| 週1日 | 1日 |
所定労働日数が週単位で定まらない場合は、年間の所定労働日数などによって判断します。また、週30時間以上なら、週4日以下の勤務でも原則として通常の付与日数です。「パートだから年休はない」という取扱いはできません。
年10日以上付与する人には「年5日取得」の義務
法定の年次有給休暇が新たに10日以上付与される労働者について、事業主は付与日(基準日)から1年以内に、少なくとも5日を実際に取得させなければなりません。農業にもこの義務は適用されます。
労働者本人が請求して取得した日数や、労使協定による計画的付与で取得した日数は、5日の中に算入できます。不足する場合は、事業主が労働者の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めたうえで、取得日を指定します。
時間単位の年休は、年5日取得義務の日数には算入できません。一方、労働者が希望し、使用者が同意して取得した半日単位の年休は0.5日として算入できます。年5日を取得させなかった場合には、労働基準法違反として30万円以下の罰金の対象となることがあります。
農繁期に「忙しいから休めない」は通る?
年休は原則として労働者が希望する時季に取得します。希望日に休ませると事業の正常な運営を妨げる場合に限り、事業主は別の時季に変更することができます。単に「収穫期だから」という理由だけで、年休を一律に認めない取扱いは適切ではありません。
農業では、作付け・収穫の計画と一緒に休暇予定も確認し、交替要員の確保や農閑期の計画的な取得を検討するとよいでしょう。労使協定を結べば、年休日数のうち5日を超える部分について計画的付与制度を活用する方法もあります。
短期・季節雇用、シフト制の農家はここに注意
毎年雇う季節労働者は「契約更新」を確認
1日限りの雇用や、短期間で雇用関係が終了する場合には、通常は6か月の継続勤務要件を満たしません。しかし、契約を更新して実質的に労働関係が継続している場合は、契約書の区切りだけで勤続期間をリセットできるとは限りません。一方、シーズン間に数か月の空白があり、雇用関係が実際に終了して、その都度新たに採用している場合などは、継続勤務と認められないこともあります。毎年来る人を一律に通算するのではなく、採用・退職・再雇用の実態から判断します。
シフト制は2026年6月の厚労省留意事項も確認
農繁期だけ出勤日が増えるなど、勤務日がシフトで決まる職場では、年休付与の基礎となる所定労働日数をどう算定するかが問題になります。厚生労働省は2026年6月19日、シフト制労働者に関する留意事項を改正しました。所定労働日数をあらかじめ決めていないことを理由に、年休を付与しない取扱いは認められません。
所定労働日数を算定しがたい場合には、最初の付与(雇入れから6か月経過時)について、雇入れから6か月間の実際の労働日数を2倍した日数を、1年間の所定労働日数とみなす方法が示されています。1年6か月経過後以降は、前年の労働日数の実績を用いる方法があります。契約で定めた目安となる日数の取扱いにも留意し、各従業員の労働条件と勤務実態に応じて判断してください。
農家が今から整備したい4つの管理項目
- 雇入れ日と契約更新の履歴:短期雇用・季節雇用も含めて、継続勤務の判定に使えるようにします。
- 所定労働日数と出勤率:週の勤務日数、シフト、出勤記録を確認し、付与日数を計算します。
- 付与日と取得予定:年10日以上付与する人は、基準日から1年以内に5日取得できるよう、繁閑を見ながら予定を組みます。
- 年次有給休暇管理簿:労働者ごとに基準日、取得時季、取得日数を記録します。保存期間は原則5年間ですが、当分の間は3年間とされています。
まとめ|「農業は労働時間の例外」と「年休は不要」は別
農業の労働基準法第41条による適用除外と、年次有給休暇の義務は分けて考える必要があります。農業でも、要件を満たす従業員には年休を付与し、年10日以上付与する人には年5日を取得させる必要があります。
まずは従業員ごとに「雇入れ日・週の所定労働日数・年休付与日・取得日数」を一覧にしてみましょう。繁忙期のある農業ほど、早めの管理が役立ちます。






