
労災保険の種類を知っておきましょう
農作業中にそれが原因でケガや病気をした場合に、労災保険に加入していれば補償が受けられるのは、このサイトでご案内しているとおりです。
ただ、農業分野の労災保険は大変複雑で、自分がどの労災保険に加入できるのか分からない方もいらっしゃると思います。そこで、みなさんが入るべき労災保険を整理したいと思います。
あなたが「自営農業者」の場合
労災保険の正式名称は「労働者災害補償保険」といいます。要するに「労働者」の「災害補償」に保険を掛ける制度です。
そこで、あなたのような「自営農業者」は労働者でしょうか。答えはバツです。「労働者」とは人に雇われて給料を貰う人をいいます。自営農業者は誰からも雇われていないし、もちろん給料も貰っていません。
「私は労災保険に加入できないの?」となりますが、自営農業者は自ら農作業することも多いですし、農作業中の事故も多発していますので、政府は、労働者でなくても加入できる「特別加入制度」を準備しています。詳しくは当該ページをご参照ください。
あなたが農事組合法人の組合員の場合
農事組合法人とは「農業協同組合法」に定められた組織で、組合員の農業生産について協業して共通の利益を増進することを目的としています。
農事組合法人は、法人税や消費税の対応のため、農作業に従事したときに支払うお金の種類をあらかじめ決めています。一つは「確定給与」。もう一つは「従事分量配当」です。確定給与は農作業代を給与で支払い、従事分量配当は、農作業代を利益の分配(配当)で支払います。なので従事分量配当は外見上、限りなく給与に近いですが、給与ではありません。
そして、この支払い方が労災保険の加入方法にも影響を与えてしまいます。以下の表で説明しましょう。労働者の労災保険を「一般加入」、労働者でない者の労災保険を「特別加入」とします。

こうしてみると、農事組合法人で農作業に従事する組合員のほとんどは労働者扱いされず、特別加入でしか補償されないことが分かります。農事組合法人で事故が起これば、法人の存続にかかわります。農事組合法人のみなさまは今一度、労災保険の加入を検討してみましょう。
あなたが農家に雇われた「労働者」の場合
労災保険が「労働者の災害を補償する」保険である限り、雇われていれば全て補償が受けられる、と思っているかもしれませんが、農業に関してそれは間違いです。
法律では農林水産業に関して以下の事業には労災保険の加入が義務付けられていません。ただ任意で加入することは可能です。

あなたが雇われた農家さんがこの表に該当していれば、その農家さんは労災保険に加入していない可能性があります。そこで働いていて、農作業中にそれが原因でケガや病気をした場合、保険では補償されません。農家さんが自腹で補償する義務があります。
ただ、仕事のケガは自己責任、と一切補償しない方もいないとは限りません。そんな場合は労基署へGO、となりますが、そうなる前に農家さんに労災保険に加入しているかどうかの確認をしてみてください。その上で、雇われた農家さんが労災保険に加入していなければ、労災の任意加入をするよう勧めてみてください。
なお、確定給与型の法人及び労働者を雇用する従事分量配当型の法人は、一般加入の労災保険が義務付けられます。また農家さんが労災保険特別加入している場合は、上の表に該当していても、労働者向けの労災保険は義務付けられていますので、ご留意ください。
労災保険の任意加入について、詳細はこちらからご確認ください。
まとめ
労災保険で分からないことや加入をご希望の場合は、農業労災事務センターまでお気軽にご連絡を。