ダブルワーク労働者の労災事故について
近年、パートタイム労働者を中心にダブルワークをする方が増えてきました。農業分野においては、そもそも専業農家より、兼業農家の方が多く、ダブルワークがスタンダードではないか、という気もします。
そこで気になるのが、農業を副業でされている方が、もし農作業中に労災事故に遭った場合です。今までは副業先の補償しかされない問題がありましたが、2019年9月に法改正があり、ダブルワークの労災保険の給付が拡大されました。以下、解説します。
- 被災者やその遺族に支給される補償額が、すべての就業先の賃金合算額で計算されます。
- 労災保険の特別加入(一人親方など)をしている方の給付基礎日額も合算されます。
- 1つの事業場で労災認定できない場合でも、複数の事業場の業務上の負荷(労働時間やストレスなど)を総合的に評価して労災認定できるようになります。
(例1)労災事故が発生した日(算定事由発生日)に複数の会社に勤めている場合は、両社とも算定されます。
(例2)算定事由発生日において、1社しか勤めていない場合は、対象になりません。
(例3)算定事由発生日には1社でも、その原因(または要因)となる事由が生じた時期には複数の会社で勤めていた場合は対象になります。
給付の基礎となる賃金の計算方法は以下のとおりとなります。
(例1)算定事由発生日に複数の事業場に勤めている場合は、両社の直近の賃金締切日から3ヶ月さかのぼって平均賃金を計算します。
(例2)会社を辞めた後、その会社の仕事が原因で病気になり、(労災の原因ではない)もう片方の会社は引き続き勤務しているような場合は、辞めた会社の直近の賃金締切日を基準に両社とも3ヶ月さかのぼって計算します。
(例3)労災事故が発生した会社には引き続き勤務し、他の会社はすでに退職している場合、現職の会社は直近の賃金締切日から3ヶ月さかのぼって計算しますが、辞めた会社が、その3ヶ月間に一部期間しか就業していない場合は、その一部期間で計算します。
ちなみに、主業が月給制、副業が日給制の場合の給付基礎日額の計算は以下のとおりです。
労災事故の原因が複数の会社にまたがっている場合の計算方法も別にありますが、次回以降にしたいと思います。