農業体験に参加した観光客がケガ!その場合の補償はどうなる?
最近は、農家さんが作った農作物の素晴らしさを伝えつつ、労働力の確保にもなり得る「農業体験」なるものが流行っているようです。実際に農業体験をした観光客が、そのまま就農してしまう、なんてこともあるのかもしれません。
ただ、そうした農業体験で、ケガをしてしまうケースも考えられますね。特に農業分野は刃物も使うし、危険な作業も多いです。もし労働者でもない観光客が作業中にケガをしてしまった場合の補償について、考えてみました。
「安全配慮義務(※)」という言葉があります。労働者を雇う事業主には法律で義務付けられていますが、労働者ではない場合でも、安全配慮義務が問われるケースはあります。
難しいですが、判例をそのまま記載しますと、「安全配慮義務」とは、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して法令上負う義務です。「ある法律関係」とは雇用関係だけにとどまらず、さまざまな関係に適用されることが想定されます。
したがって、相談者が通常行うべき安全配慮義務を怠って、そのために観光客に事故が起こってしまえば、その方から損害賠償請求をされることは十分あり得ます。
想定される事故としては、滑りやすい場所や作業時の転倒、とがった部分での刺し傷、刃物を扱っての切り傷、熱中症、などでしょうか。
そこでまず考えないといけないのは、事故が起こらないように、予め作業内容や作業場所などで起こりうる危険を予知して、それを防止するための取り組みを行うことです。まさに安全に配慮することです。
次に考えるのが、ご質問どおり保険を掛けることです。観光農園などが加入する農業者賠償責任保険などをご検討されるといいのではないか、と思います。
あまり大げさに考える必要もないとは思いますが、相談者さまがご自分で農作業をしていて危なかったな、というようなことを防ぐ取り組みにもつなげていただければと思います。